天才が夢見た世界征服とは:超獣戦隊ライブマン

昭和最後の特撮系戦隊ヒーロー「ライブマン」がおもしろい。

番組開始時に毎回流れる「友よ!なぜ君達は悪魔に魂を売ったのか!」というセリフのとおり、悪魔に引き裂かれた友情に苦悩する若者達の物語である。泣けた。

大人になってから観ると細かいところには無論つっこみどころも多々あるが、それ以上に見ごたえのある人間ドラマがそこにはあった。大まかなあらすじは以下の通り。

世界中の優秀な若手科学者が集まる科学アカデミア。そこで主人公の勇介・丈・めぐみが大勢の科学者と共に学んでいる。

ある日「武装頭脳軍ボルト」の指導者である大教授ビアスから、科学アカデミアでも特別優秀な月形剣史と仙田ルイに突如難題が送られ、それを解いた2人はより高いステージを目指すためもう一人の秀才尾村豪と共に3人でアカデミアを去り悪の組織である頭脳軍への参加を決めた。

迎えの宇宙船に乗り込む所を偶然みつけた勇介ら3人は月形と仙田を止めるが、ケンジ、ルイ、豪の3人は勇介たちと一緒にいたもう2人の同僚を撃ち殺しボルトへと発つ。

地球征服を目論むビアスは科学アカデミアを急襲して破壊、そして月形と仙田もビアスのしもべとして地球を襲うことになる。しかし科学アカデミアの校長であった星博士が極秘裏に開発していた強化スーツと3台の巨大メカの力を借りて勇介ら3人は超獣戦隊ライブマンとしてボルトと対峙することになる。

本編ではお決まりの(本作ではヅノー獣と呼ばれる)怪人とライブマンとの対決が毎回展開されることになるが、元仲間ゆえ、元人間ゆえの様々な葛藤を抱えながら物語は綴られてゆく。ライブマンは戦隊名が物語るとおり命の重さをテーマにしたストーリー。ついでに学歴偏重に一石を投じる要素も含まれている。

登場人物たち

ライブマンは勇介、丈、めぐみが変身するレッドファルコン、イエローライオン、ブルードルフィンの3名から成る正義の味方。後半より鉄也と純一のブラックバイソンとグリーンサイの2名が加わり総勢5名になる。

鉄也と純一は科学アカデミアを去った3名が宇宙船に乗る時に撃ち殺した2名の弟達である。家族の敵討ちを果たそうとする2人と、地球の平和を守るためとは言え元友人と戦うことに苦悩する3人。

その他万能ロボットのコロンと巨大ロボのライブロボ、ライブボクサー、そのふたつが合体したスーパーライブロボでボルトを迎え撃つ。ライブマンチームの司令塔になると思われた星博士はボルトの攻撃により死亡。よって若者3人のみでボルトと戦うことになる。

頭脳軍ボルトの構成員は指導者である大教授ビアス、科学アカデミアを去った剣史、ルイ、豪がそれぞれ肉体改造をした末に生まれ変わったケンプ、マゼンダ、オブラーの3名、地球から拉致されビアスに脳改造されたアシュラ、宇宙人ギルドスとブッチー、そしてビアスに絶対の忠誠を誓う万能ロボットであるガードノイド・ガッシュの総勢8名。

ビアスとガッシュを除く6名がライブマン打倒の現場担当で、地球を支配するというボルトの崇高な目標のために、それぞれがヅノー獣を生み出しライブマン打倒に燃える。ボルトはライブマンとは違いお互いが協力し合うことはなく、身内同士での争いが熾烈である。

私は個人的に「悪の動機」にとても興味があるので、ライブマンでも最も気になる人物は大教授ビアスである。自然と彼に注目しながらライブマンを観ることになった。

大教授ビアスはなぜ地球を征服したいのか

戦隊シリーズの悪役が地球征服をたくらむのに理由など必要ないだろう。頭脳軍ボルトももその例にもれず、ビアスや幹部から「地球を征服する」「地球人を恐怖に陥れる」「地球を支配する」旨の発言が度々聞かれる。

しかし宇宙一の天才と部下から慕われる大教授ビアスは、典型的な悪の指導者とは思えないほど物腰穏やかで上品な人物で、アフタヌーンティをたしなんでいてもなんら違和感がない。後半クライマックスに近づくにつれ声を荒げるシーンも増えたが、基本的に部下には愛情のこもった優しい口調で接する。さらに部下も天才だけありとても上品である。

大教授ビアスは他のシリーズに出てくるような粗暴で快楽のために殺人を楽しむような悪役とはまったく異なるキャラクターである。あくまでも個人的な推測だが音楽の趣味はクラシックだと思う。例えばジェットマンの悪役4人組などはいかにも悪ぶってバーボンを飲みながらロックを聴いているに違いないが、ビアスが飲む酒はワインである(数話でワインを飲むシーンが確認されている)。

このような人物が他の悪役と同じような「地球人を恐怖に陥れたい」などの短絡的な目的のためだけに動いているとは思えない。今日、武力と恐怖で世界を治めるというのはメリットの方が少ないように思える。しかし地球を征服したい旨の発言は作品中の随所に出てくるので「地球を支配」するという考えは間違いなく持っている。特に死に際に意識がなくなりつつある時に、一番の忠臣ガッシュが基地の爆発のことを「ビアス様のために地球が祝砲をあげています」と言った時の幸せそうな顔からも地球征服の意図があったと判断できる。

発言や行動から判断するとビアスは間違いなく地球人を下等な生物と見なしている。このことを考慮すると、天才の統治により地球を幸せにしたいと考えていたのではないだろうか。下等な地球人に幸せをもたらすことができるのは自分しかいないと。大教授ビアスが地球征服により実現したかったもの、それは「平和」である。

地球征服のために必要なこと:キーワードは「天才」

ボルトの指導者大教授ビアスはとにかく「天才」にこだわる。地球の天才科学者3人のヘッドハント、ケンカは恐ろしく強いが勉強がまったくできないチンピラの親分を拉致し脳改造を施し天才アシュラに生まれ変わらせる、さらに天才宇宙人と称するギルドスとブッチーを仲間に引き入れる。そしてその5人を争わせ、お互いが切磋琢磨し才能を競う環境を作る。これだけ天才にこだわるには理由があるはずだ(宇宙人ブッチーとギルドスは、実は他の幹部と競わせるためにビアスが作ったロボットだったことが後に判明)。

物語後半にはビアスが部下に「500点」「プラス100点」など具体的な成績をつけ競争心をあおる。宇宙一を争う科学者達に向かって500点だの600点だの成績を発表するシーンは滑稽であったが実はこの点数にも意味があった。それは天才を集めることによってのみ達成される、世界征服と同じぐらい重要な目的に必要だったのである。その目的とは若返ること、欲を言えば永遠の命である。

ビアスの見た目は人間の中年男性であるが、実はそれは仮の姿で真の姿は死期が目前に迫った老人である。ビアスが若い体を保つには若い天才の脳からエネルギーを吸い取る必要があった。これまで地球から騙して連れ出した11人の若手天才科学者から脳を取り出し、特殊な保存方法で脳の鮮度を保ち定期的にエネルギーを吸い取っている。さらに少年時代にまで若返るためには「1000点頭脳」があとひとつ必要だった。そのために地球から最後の1000点頭脳の候補とするべく、その原石である剣史・ルイ・豪の3人の天才若手科学者を組織に加えたのだ。

なぜ少年まで若返る必要があるのか

ビアスは向上心の強い人間であるから「学ぶ」ことをやめたくなかった(49話で本人が語っている)。そのためできるだけ若返り寿命を延ばす必要があった。地球征服のために必要だと考えたのだろう。

ビアスは宇宙基地まで建造し、人間以上の性能を持ったロボットをいとも簡単に作ってしまうような天才である。武装頭脳軍ボルトは科学力が成績に直結する組織であるから、部下同士が切磋琢磨し技術を競い合う環境を作り、部下に天才が何人いようとも科学力でも常に自分がトップに立つ努力を怠らない。しかし自分がでしゃばって何でもやるのではなく部下にきちんと仕事をさせる。

そんなビアスが考えるのは「永遠に勉強しつづけたい」ということである。できるだけ長く勉強を続けるために、できるだけ若くなりたいのである。本人も途中まで気づいていなかったが、少年になるというのはライブマンから狙われにくいという利点もあった。実際にブルードルフィンは子供になったビアスを撃つことができなかった。

少年に戻りできる限り勉強をし続けたいという願いは、超天才ビアスゆえの苦しみであり悲しみではなかろうか。自分のような天才が普通に生きて普通に死んでは地球にとってあまりにも不幸な出来事であるとビアスは考えたはずだ。学歴偏重に非難が集中する昨今だが、このようなビアスの姿勢は見直される価値がある。

ビアスの目的はやはり平和であると考えるしかない

ライブマンの抵抗に合い思うように計画が進まないところを見て、もう一度若返って計画を練り直したかったのかもしれない。このことからもビアスが用心深く慎重な行動をする人物であることがうかがえる。しかしヅノー獣の性能などハード面の強化に集中するあまり、戦術というソフト面がおろそかになり弱点になってしまった頭脳軍ボルト。ボルトの人材は天才ばかりのため、基本的に各自がスタンドアロンな行動を取る。

自らも地球人である可能性が高いビアスの地球征服の真の目的とは、やはり地球の平和以外に考えられない。地球人を下等生物と言い放つが、地球人を抹殺するのではなく救いを与えたかったのだろう。ビアスの科学力で地球に平和をもたらすことができると本気で考えていたとすれば、彼を悪と言うことはできないのである。

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