闇の騎士ダース・モールの復活

ダース・モールはジェダイを圧倒する戦闘力を誇る暗黒卿シスである。体中に赤と黒の隈取り模様の刺青が彫りこまれ、頭には何本も角が生えている。常に血走っている黄色い目と合わせ悪魔のような風貌である。夢に出てきそうなほど怖い。エピソード1で死んだと思われた彼だが、エピソード2と3の間を描いたアニメ版スターウォーズ「クローン・ウォーズ」で復活した。

人気のあるキャラクターなので、この復活はあくまでも商業的な理由からだろう。ストーリー的に復活が必要だったわけではないと思う。

ダース・モールは正義の悪役であるべき

復活後のダース・モールは、オビワンに対する復讐が唯一の存在理由である怨念の塊として描かれている。

ダース・モールは個人的に好きなキャラクター上位に入るので、また活躍が見られることは楽しみな一方、このような描かれ方に疑問を感じる。そもそも胴体をまっぷたつにされても生きているなど、いくら医療が進んだ世界といえどもストーリー的にまずいと思う。クワイガンは一刺しされただけで死んでしまったのだから。

ダークサイドとは言え彼は主君に仕える忠義の騎士なのだから、戦いに敗れて死んだのであれば潔く死なせてやるべきではなかったか。人気があるため商業的な理由からの復活だろうが、「恨みを晴らす悪役」といったありきたりな安っぽいキャラクターにしないでほしかった。

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映画でのダース・モールはどのような役割か

ダース・モールはエピソード1で、ダース・シディアスからジェダイの暗殺という任務を与えられた。ジェダイの抹殺をもくろむダークサイドにとっては重要な任務である。彼はクワイガンの殺害に成功したが、その直後のオビワンの奇襲に対応できず、胴体を上下半分ずつのまっぷたつにされて底なしの溶解孔に落ちた。誰もが彼は死んだと思っただろう。

ダース・モールの映画登場はエピソード1の数シーンのみ。セリフも一言だけ。制作側が彼に課した役割は、暗黒卿シスの復活をジェダイに示唆すること、クワイガンに死をもたらすことであったと思う。そしてオビワンに敗れて死に、物語からは退場する。映画を見ている人達もそれで納得しただろうし、その後、彼がいなくなればただ忘れさられただけだろう。とにかく彼はエピソード1で消えても物語上は問題のないキャラクターだった。

小説「ダース・モール 闇の狩人」で知るダース・モール

僕がダース・モールを好きになるきっかけになったのは「ダース・モール闇の狩人」という小説である。この小説はダース・モールが主役で、彼の人物像についても映画とは比較にならないほどの描写があり、スターウォーズ補正を抜きにしてもおもしろい話なので、どなたにでもおすすめできる一冊である。この小説の舞台はエピソード1の前で、若干設定が違っている箇所もあるがそれは気にせず読める。

ストーリーを簡単に書くと、ある情報が入ったホロクロンを持って逃げる情報屋とジェダイを、ダース・モールが追うという内容である。この話の中でのダース・モールは、マスターに与えられた任務を淡々とこなす忠義の騎士として描かれている。任務のこと以外は頭になく、目的達成のために必要ならば相手が弱者であろうが容赦なく殺す。だが、任務遂行に必要のない無用な人殺しはせず、刻々と変化する状況を冷静に分析しながら、常に最善を尽くすことを怠らない。

小説では、優秀なダース・モールが相手に裏をかかれ失敗する描写もある。しかしそういう時にも彼はマスターに正直に報告する。自分に対する信頼が損なわれるかもしれないという恐怖があるものの、忠臣の彼は師を欺くようなことはしないのである。

彼は強い相手との戦いを望み、また、強ければ強いほど相手に対して敬意を表することからも、金銭目的に悪事を働く賞金稼ぎとは明らかに一線を画す。ジェダイ側の主役でダーシャという若手パダワンが登場する。モールは、彼女のマスターで実力派だったボンダーラというジェダイすら圧倒的な実力差で倒していた。ダーシャにとってモールは、正面から斬り合って勝てる相手ではない。ダーシャはモールとのセーバー戦で、攻撃をかわしつつフォースで爆薬を集めてモールを罠にはめた。勝負はもちろんモールの勝利に終わったが、著しく実力の劣るパダワンが知力をもってモールに挑んだことに対して敬意を表すことを忘れない。そしてダーシャはモールに追われていた情報屋を逃がすことにも成功した。

小説では、ダース・モールは、忠臣であるがゆえに善悪などは考えずにただひたすら与えられた任務を遂行しているだけで、私利私欲のためにその力を使うような野蛮な人物ではないということがわかる。少し話しがそれるが、ジェダイが善でシスが悪というのも考え方ひとつによって変わるものだし、スターウォーズがジェダイ目線から描かれているからシスが悪役ということになっているだけだろう(僕には、むしろジェダイを含む共和国側が悪にしか見えない)。

ダース・モールの復活とその後の行動

 上述したような「正義の悪役」ダース・モールは、オビワンに対する復讐を唯一の存在理由として、アニメ版スターウォーズ「クローン・ウォーズ」シーズン4の22話で、スターウォーズの物語に再登板することになった。アニメ版ではモール回がいくつもありセリフも多い。恐ろしい風貌には似つかわしくない、物静かで落ち着いた知的な喋り方がクールでかっこいいのである。

弟サヴァージの手助けで復活したダース・モール

ダース・モールはダソミアという惑星に住むザブラクという種族の出身である(出身地については小説版とクローンウォーズで設定が違うが、最新のクローンウォーズの設定を公式と見做す)。この星はザブラクの本来の出身地ではなく、モールの出身村はナイトシスターズ(ダソミアの魔女)と呼ばれる集団に支配され、ザブラクはほぼ奴隷のような生活をしている。みな痩せていて争いを好むようには見えない。

モールには(おそらく)面識のないサヴァージ・オプレスという弟がいた。ドゥークーの弟子だったがその後裏切られた、ナイトシスターズ出身のヴェントレスが企てた復讐計画を手助けするため、サヴァージはナイトシスターズによって無理やり戦士にさせられた(シーズン3の第13話)。

当初サヴァージは痩せていたが、戦士になる時に魔女のフォースで強靭な肉体を手に入れ、たいていのジェダイならばいとも簡単に倒せるほどの強さに成長した。その後ドゥークーと対峙した際にヴェントレスに裏切られたと感じ、さらにアナキンとオビワンに邪魔をされ、彼らすべてを圧倒する力を手に入れることを誓う。ダソミアの魔女は、サヴァージが強くなるためには兄モールの教えが欠かせないことを教え、彼は兄を探しに行く。

オビワンに胴体をまっぷたつにされて死んだと思われたモールは、ロソマイナーという廃棄物処理場のような惑星の地下洞窟で、下半身にクモの義体をつけた状態でサヴァージに発見された。発見当時のモールは記憶が失われ狂人となっていたが、ダソミアの魔女の力で心身ともに元の強いモールに戻る。クモ義体も二本足の人間型に改造された。そしてオビワンへの復讐を果たすために活動を始める。

復活後のダース・モールの行動

すでに述べたように、復活後のダース・モールはオビワンへの復讐に燃える怨念の塊として描かれている。とても悲しいキャラクターである。エピソード1や小説の時のような「悪の正義感」は微塵も見られなくなってしまった。私利私欲のためにフォースを操るのがシスだという定義が一般的だが、少なくともエピソード1までのモールはそうではなかった。

オビワンとの決闘を望むダース・モールは、サヴァージと共に惑星レイドニアの村で丸腰の村人を無差別に殺し、さらに人質を取ってオビワンに挑戦状をたたきつける。以前のモールであればこのような手はとらないだろう。復讐の念があるにしても、それよりも先にマスターであるダース・シディアスの元へ戻らなければならないと考えるはずである。しかし復活したモールがマスターのことを思い返す描写はない。冷静さを失い的確な判断ができなくなったキャラクターとして描かれ始めたダース・モールは、この回をもって正義の悪役からチンピラへと配置変えをされてしまったのである。

話を元に戻すが、オビワンは一人でレイドニアにやってきた。しかしモールとサヴァージの二人を相手にしたためあえなく敗北を喫し捕らえられてしまう。その後ヴェントレスに救出され九死に一生を得る。一方モールはオビワン打倒のために、拠点と兵隊を手にいれようとする。海賊オナカーの基地を襲撃するが失敗、その後成り行きで惑星マンダロアの反政府勢力デスウォッチを支配下におさめ同星を支配する。拠点が必要なのはわかるが、大々的に軍隊を仕立てるようなことは孤高な騎士であるモールらしくない。

マンダロアとモールの関わりに違和感がある

マンダロアはモールと特に関係のある場所ではない。マンダロアはマンダロアで、モール登場以前にも度々エピソードの舞台になっており、モールとは関係なくストーリ上のある程度重要な場所である。

マンダロア統治者の女性公爵サティーン・クライズはオビワンと関係の深い人物であるが、モールはそのことを知っていたわけではなく、それを前提としてマンダロアを影響下に置くことにしたのではない。マンダロアへ行く前に、まずオナカーの基地を襲っていることからもそれは明らかである。

マンダロアは中立地域なため共和国が手を出しにくいという事情があり、そのことはモールにとって好都合だったが、最初からそれを狙ってマンダロアに乗り込んだわけではない。これまで無関係だったマンダロアで、いきなり支配者づらをしているモールはむしろ滑稽ですらある。

しかしオビワンにしてみれば、結果的に、かつて憧れた女性を人質に取られることになった。サティーンからの救難信号を受けオビワンは単身マンダロアへ向かう。モールにとっては、オビワンが救出に来れば直接対決の場を設けることができる。しかしマンダロアの宮殿でモールとオビワンが対峙した際に決闘は行われずじまい。

サティーンはその後オビワンの目の前で、黒いライトセーバーでモールに刺し殺されたが、オビワンは怒りや憎しみで取り乱すこともなかった。サティーンの死が原因で、スターウォーズの本流キャラクターであるオビワンがダークサイドへ落ちるか、落ちる寸前まで苦しみそれを乗り越えさらに成長した、という設定でもあればダークサイドの代表的なキャラクターであるモールの登場やサティーン殺害にも意味があるが、そのような描写はない。

モールは、サティーンが殺されがっくりと肩を落とすオビワンをただ牢屋に入れただけ。ここで勝負をしないなら、オビワンをおびき寄せるために無抵抗の人々を虐殺までしたのはなんだったのか。あとで拷問するつもりだったのだろうか?一流の悪役だったはずがこれではただのチンピラではないか。

その後オビワンは反モール勢力に助け出された。そしてモールの復活とその反逆をフォースで察知した、ダース・シディアスことパルパティーンはマンダロアへ向かう。モール兄弟は二人でシディアスにセーバー戦を挑むが、まったく歯がたたない。弟サヴァージは殺される(復活が無いとは言えないが)。モールはかろうじて生かされたが完全にシディアスの支配下に置かれた。しかしモールがマスターに対して決闘を挑むというのも、アニメ以前のダース・モールの人物像を完全に無視している。その後はモール回がないままシーズン5が終了したので、彼の今後についてはシーズン6以降に持ち越しである。

オビワンに対する復讐心も経緯がいまいち

どんなジェダイにも負けない最強の戦士だと自負していたモールが、一介のパダワンによる奇襲で敗れたことに対して無念がつのるのは理解できる。しかしこれはモールの傲慢と油断が招いた結果である。以前のモールならば、隙をついて奇襲に出たオビワンの機知に敬意を表し、むしろ自分の傲慢さを恨んでいたと思う。しかしアニメ版のモールの復讐心はとてつもなく大きい。

モールとオビワンの関係は非常に薄い。モールにとどめを刺したのは間違いなくオビワンだが、オビワンとの対決はこの一度だけ。たったの一度である。幾たびも戦いを繰り返した因縁のライバルではない。

小説闇の狩人にもオビワンは登場するが、本編とはほぼ無関係でモールとの接触はない。しかしいまのところスターウォーズの復讐班代表はモールである。まさかの敗北で性格が変わったことは間違いない。今のモールに納得がいかないのは事実だが、シディアスに確保された今この復讐劇が今後どう展開するのかは楽しみである。

ダース・モールにとって意味のある復活とは

ダース・モールファンとして思うのは、復活させるならばその存在に見合った復活をさせてほしかったということである。有象無象の悪役とは違う、悪役のエリートとして筋の通った活躍をさせてほしかった。あくまでも個人的な希望だが、オビワンを殺すためなら手段を選ばないのではなく、正々堂々とセーバー戦で決着をつけてほしかった。椿三十郎の三船敏郎と仲代達也のように!

ダース・モールにとって意味のある復活とは、を考えてみた。

案1:スターウォーズ本筋に関わる重要な役割がある場合

例えばアナキンのダークサイド入りに決定的な影響を与えるなど、スターウォーズの本筋に関わる重要な役割がある場合は、闇のフォースがかなり強い人物が必要とされるだろうから、モールに白羽の矢が立てられるのもまだ納得できる。

しかしアナキンとモールは接点がないし、なによりアナキンにはモールよりもさらに大物のパルパティーンことダース・シディアスが直接関与している。結局モールはスターウォーズ本筋に影響する役割を演じることなく、その行動を反逆とみなしたシディアスに死亡寸前まで追い込まれたところでアニメ版で活動が中断している。

僕は読んでいないが、非公式コミックなどではシディアスから見放されたモールは、シディアスの新しいアプレンティスであるベーダーとの勝負や、オビワンとの再対決もあるとのこと。

案2:予想以上に人気の出たダース・モールに改心の機会を与える

幼いころからシスの訓練を受け常に憎しみや怒りを自己の存在理由としてきたモールが、オビワンや他のジェダイと関わることで内面的に成長し闇のフォースから解放される。その後善人に転じる必要はないものの、悲しい過去と決別し闇の力とは関係のない自分の存在意義を見つけ、新たな人生を歩み始める。多数のファンに受けが良いと思う。

信念に基づき平和のために共和国を倒す独自の勢力を立ち上げるのも良いかもしれない。しかし他とは群れない孤高の戦士こそ、彼にお似合いの人物像だと思う。

案3:オビワンときちんと対決させたいという制作陣の親心

実力では圧倒しながら油断したために敗れたオビワンとの戦いを、きちんとしたライトセーバー戦で決着をつけさせてやりたいという制作陣の親心がある場合。

しかし復活後にオビワンと初対峙した際は弟と二人がかりで攻撃していたし、マンダロアで再対峙した時にも機会があったにも関わらずセーバー戦は行われなかった。その時モールはサティーンを殺し「深い悲しみを味あわせてやる」と言ってオビワンを捕らえて牢屋に入れただけである。セーバー戦で決着をつけたかったわけではなく、苦しみを与えたかったのである。このようなことからモール復活の裏に、オビワンと正々堂々勝負をつけさせてやりたいという制作陣の親心は特に無かっただろう。

復活したからにはオビワンとの直接対決で、今度は逆にまっぷたつにしてほしいものである。その後の映画を見るとオビワンは元気にしているので、その結果はなさそうだが。

ダース・モール復活劇まとめ

復活させるならもっと品格の漂う正義の悪役として復活させてほしかったが、僕がダース・モールをかいかぶりすぎているだけかもしれない。長々とモール復活について書いたが、今のようなモールの活躍が制作側のベストな判断なのだろうし、見る人がそれぞれ考えて楽しめば良いと思う。

スターウォーズはエピソード4~6公開以降、予想以上の大ヒットでいろいろと状況が変わっただろうから、旧作と新作が続編とは思えない部分もある。エピソード7の制作よりも、新三部作やスピンオフとの関連を考慮し、ストーリーを改めた4~6の旧三部作を作ってほしい。もちろんダース・モールも出てきてほしいし、アナキンと共にアニメ版主役だったアソーカも、このまま消えるのは惜しいキャラクターである。

とにかくエピソード7以降も、アニメ版も、小説版も今後がさらに楽しみである。

2017年1月追記:モールはエピソード3と4の間を描いた「反乱者たち」で再びスターウォーズに復活した。主人公のエズラ・ブリッジャーをアプレンティスにしようとたくらみ、相変わらずオビワンへの復讐を果たそうとしているキャラである。反乱者たちのシーズン3後半予告編を見る限り、この先オビワンとの直接対決がありそうだ。

スターウォーズ反乱者たちで復活したダース・モールは今どうなっているのか
Embed from Getty ImagesネタバレありディズニーXDで放送中の反乱者たちシーズン3が面白くなってきた。自分が好きなキャラクターであるダース・モールが出てきたのはなんともうれしいのだが、もはやファントムメナスの時の恐ろしいモールは一体どこに行ってしまった...
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